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2019年の海外製アニメーションを象徴する『幸福路のチー』と 片渕須直監督作『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

2019/12/24 20:38 up!

アニメ評論家 藤津亮太氏が語る 「チー」と「すず」の共通点と2019年のアニメーション

 ~アジアの片隅で生まれた映画がアニメーションの最前線をいっている~

東京アニメアワードフェスティバルTAAF2018以降、日本劇場公開を目指して活動をしてきた「拡福隊(かくふくたい)」には、映画監督、アニメーション評論家、漫画家たちが名を連ねています。

その拡福隊の一員でもあるアニメ評論家の藤津亮太氏に、良作の公開が続いた2019年の海外製アニメ―ションを象徴する存在としての『幸福路のチー』、そして『この世界の片隅に』との以外な共通点についてお話を伺いました。

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様々な海外製長編アニメーションが公開された 2019 年ですが、『幸福路のチー』はそんな今年 を象徴する1作といえます。今、世界では様々な長編アニメーションが制作されるようになって います。そこでは「自分(自分たち)がどのような人間であるか」という探求が様々な形で描か れることが増えています。

『幸福路のチー』はチーという 1975 年生まれの台湾の女性が主人公です。映画は、成長した彼 女が幼少時を振り返る形で始まり、彼女の人生の向こう側に台湾の生活や政治状況が浮かびあが ってきます。そこにはチーという個人だけではなく、30 代女性の戸惑いや、故郷とアメリカの間 で惑うアジア人の姿も見えてきます。チーは、チーであると同時に、“私たち”でもありうるキ ャラクターなんです。

こういうチーの主人公像は、例えば戦中戦後の呉を舞台にした『この世界の(さらにいくつも の)片隅に』の主人公すずとも通じるものがあります。すずは呉に嫁いた少女という個人である
こうふくろ ――『幸福路のチー』全国順次公開中――

2019 年の海外製アニメーションを象徴する『幸福路のチー』と 片渕須直監督作『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

アニメ評論家 藤津亮太氏が語る  「チー」と「すず」の共通点と 2019 年のアニメーション
~アジアの片隅で生まれた映画がアニメーションの最前線をいっている~

と同時に、戦時中を生きた私たちの祖父母世代のひとりです。さらに、家制度の中で自分をいか に確立すればいいかで悩む個人でもあります。

チーとすずが似ているのは、アニメーションという表現手段の特性によるものです。絵という 抽象化を経ているからこそ、「私である」と同時に「私たちでもある人物」を表現するのに適し ているのです。これが最初にお話した「自分(自分たち)がどのような人間であるか」を探ると いう今の長編アニメーションの潮流を後押ししています。

2019 年は世界の様々な長編アニメーションが紹介されたことで、日本の長編アニメーションも そうした世界のアニメーションの中の「ワン・オブ・ゼム」であることがはっきりした1年とな りました。そんな1年だったからこそ、日本人と似て非なる台湾の人々を描いた『幸福路のチ ー』は、とても大きな存在感を放っていると思います。

(2019年12月 東京某所にて)